提灯の歴史と由来
お祭りやお店の装飾•看板・照明器具としても馴染みがあり、私達の日常生活に溶け込んでいるちょうちんの、知っていそうで意外と知らない歴史・由来や基礎知識をご紹介いたします。
提灯の起源
日本におけるちょうちんの起源は平安時代から室町時代頃と言われています。諸説ありますが、提灯のことが示された最も古いとされる平安末期の文献によると、中国より伝わった折りたためない円形状の竹かごのようなものに和紙を張り付けた簡素なものが原型という説が濃厚です。その後、室町末期には日本独自の技術により、折りたたみができる、現在の私たちが認識している提灯が制作されたということです。
提灯の発展と普及
室町時代以降、ちょうちんは祭礼や戦場などで広く使用されるようになり、日本独自の進化を続けていきます。
さらに後の江戸時代中期になると、ロウソクの生産性が上がり大量生産も可能になったため、価格が下がり、庶民の間にも広く普及するようになりました。
当初はお盆などの宗教的儀式や日常の照明器具など、使用される場面も限定されていましたが、次第に活躍の場を広げ、単なる道具としての領域を超えて、暮らし・信仰・美術などを具現化する文化の象徴として確立され、現在に至ります。
提灯の名前の由来
提灯という名前の由来は、手に提げて持ち歩いたり、家の軒下に提げたりするということから、「提灯」という文字が使われるようになり、「ちょうちん」という読み方は江戸時代に伝わった中国語の発音「唐音」からきているとも言われています。
表記に関しては「提灯」以外で『提(さげる)』『挑(かかげる)』『燈(あかり・ともしび)』などの文字を使用して「提燈」「挑灯」「挑燈」などと表記される場合もあります。
提灯の構造
主に3つの部位によって構成されている提灯。
各部位の特長や役割をご紹介します。
- 火袋:和紙や障子紙などを螺旋状に巻いた骨の周りに張った提灯のメイン部分。風から光源を守り、内部に明かりを灯して周囲を照らします。
- 加輪:火袋の上下の口を挟むようにして取り付ける、骨を固定するための丸い形の金具。竹でできた曲げわっぱやプラスチックなどが使われます。中には高級感・特別感がある漆塗りのものや、装飾文様が施されたものなどもあります。尚、簡易的な提灯には付いていない場合もあります。
- 骨:竹ひごや木材などで作られた火袋の形を決める提灯の骨格部分。一条らせん式と呼ばれるらせん状に巻いて使う手法と、巻骨と呼ばれる輪に組んだものを組み合わせて作る手法があります。
提灯の産地
提灯は、中国・台湾・日本の各地で作られています。
以下が日本国内の代表的な産地となります。
- 岐阜県:岐阜提灯
- 福岡県八女市:銘木や縄張りなどの技術を使った提灯
- 京都府:京提灯
- 茨城県水戸市:水府提灯
- 神奈川県小田原市:小田原提灯
- 香川県:讃岐提灯
- 愛知県名古屋市:名古屋提灯
上記の産地全てには、質の良い竹と紙が産出できるという点が共通しています。
提灯の用途
今も昔も提灯は私たちの生活に深く根付いています。日常的に目にする用途から、特別な儀式でのみ使用される限定的なものまで、日本の文化の象徴としての役割を現在でも担い、様々な用途で活用されています。
【お祭り】
ちょうちんは江戸時代以前から、上流階級では宗教的な祭礼や儀式に使われていました。
庶民の間で普及した江戸時代以降は、参加者が夜中までお祭りを楽しむための照明や装飾として使われるようになりました。
幻想的な光を放つちょうちんによって、お祭り会場特有の神秘的な雰囲気を演出することができるため、現在でも日本全国各地のお祭りで広く使用されています。
【看板】
居酒屋・飲食店などの店先に設置する、店舗名や商品名を入れた看板用のちょうちんは、諸説ありますが、江戸時代には既に存在していたとされています。
存在感のある形状や色合いのアイテムが多く、昼間でも一定の訴求力があり、夜は明かりを灯すことでより一層目立たせることができます。
【お葬式】
お葬式の際に、式場の門の前に一対で掲げてある提灯は、門前提灯とよばれています。
門前提灯の起源も江戸時代頃と言われていて、当時は神社仏閣の境内に飾っていたものが、次第に境外にも飾られるようになり現在に至ります。
ちょうちんは白地のものが多く、祭壇の両脇などに設置する場合もあり、御神燈・御霊燈・忌中といった文字を入れた回転灯や霊前灯などがあります。
【お盆】
お盆で盆提灯が一般的に使われるようになったのは江戸時代以降と言われています。
ご先祖様がお盆の時期に迷わず里帰りできるように、道しるべとして仏壇・盆棚の前や玄関・軒先に明かりを灯して飾るのが一般的です
盆ちょうちんはご先祖様の霊をお迎えする迎え火と、お送りする送り火の際にも使用し、ご先祖様の霊を供養するために欠かせない重要な道具です。
【神前】
御神灯とも呼ばれ、神事で使われたり神社の拝殿などに飾られる神前用の提灯です。
また、芸人の家や芸者屋などでも、縁起をかついで戸口につるした提灯が使われることがあります。
まとめ
長い歴史のなかで発展を遂げながら、日本文化を支えてきた提灯。
時代に合わせて用途や役割を少しずつ変えながら、現在でも私たちの生活に彩りを添えてくれる重要なアイテムとして存在感を示しています。
日本の文化と歴史を象徴する提灯を今後も大切に扱い、次の世代に引き継いでいくことが私たちの使命なのかもしれません。